秋田県の人口はなぜ減る?女性・若者流出から見える「ちょっと笑えない」現実
秋田県の人口が減っている。
これはもう、県民にとっては「冬は寒い」「大曲の花火の日は道路が混む」くらい聞き慣れた話ではないでしょうか。
少子高齢化だから仕方ない。
若者が東京へ行くから仕方ない。
子どもが生まれないから仕方ない。
あまりにも長いこと聞かされてきたので「秋田県の人口減少が深刻です」と言われても、
「でしょうね」
くらいしか出てこなくなりました。
ところが、そんな秋田県民の「でしょうね」に、かなり強烈な右ストレートを入れてくる資料があります。
2023年7月、秋田市で開催された「人口の社会減と女性の定着に関する情報発信 秋田フォーラム」。基調講演を行ったのは、人口動態を専門とするニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏です。
講演タイトルは、
「なぜ秋田の赤ちゃんは激減したのか ―全国ワースト1の出生減の原因とは―」
もうタイトルからして優しくありません。
そして内容を読んでみると、さらに容赦がない。
ざっくりまとめるなら、
「秋田さん、少子化の原因を見る場所、ちょっと違ってません?」
という話です。
しかも、この講演は2023年のもの。
そこで今回は、2026年現在の秋田県の人口や女性・若者流出の最新データも加えながら「本当にそんなにひどいのか」を見ていきます。
先に言っておきます。
秋田県民にとっては目を背けたくなる内容を書きました(閉じるなら今ここで!)。
「言われなくても分かってる」「見なきゃよかった」と思うかもしれませんが、この記事をきっかけに、ご自身の近しい人と秋田県の将来を話し合ってみてください。
秋田県人口と女性・若者流出|まず最新の数字がちょっと笑えない
まず、現在の秋田県人口から。
秋田県オープンデータポータルによると、2026年7月の秋田県人口は86万4,753人です。
100万人を割った。
90万人も割った。
そして今、86万人台。
数字だけ並べるとサラッとしていますが、秋田県の総合計画を見ると、この人口減少は昨日今日始まった話ではありません。
秋田県の人口は1956年の約135万人をピークに減少へ転じました。1993年以降は、死亡数が出生数を上回る「自然減」と、転出者が転入者を上回る「社会減」が同時進行しています。
自然減。
社会減。
二刀流です。
そこは二刀流じゃなくていい。
さらに、2024年10月から2025年9月までの1年間を見ると、
- 出生:3,076人
- 死亡:17,095人
- 県外からの転入:11,628人
- 県外への転出:15,036人
となっています。
自然減が1万4,019人、社会減が3,408人。
合計すると、1年間の人口減少は1万7,427人でした。
出生3,076人。
死亡17,095人。
念のため二度書きたくなる数字です。
「少子化」という言葉が、ずいぶんかわいらしく見えてきます。
秋田県人口と女性・若者流出|人口減少の原因は「産まないから」だけではない
では、なぜ秋田の子どもはここまで減ったのでしょう。
普通に考えると、
「昔より夫婦が子どもを産まなくなったから」
と思います。
ところが、天野氏の分析を見ると少し違った景色が見えてきます。
1970年から2021年までの約半世紀で、秋田県の出生数は76%減少しました。
現在の出生数は、1970年の約24%。
ざっくりいえば、
4人いた赤ちゃんが1人になった。
そんな規模です。
ところが同じ期間で、婚姻1件当たりの出生数は1970年の88%程度を維持していると天野氏は指摘しています。
つまり、
「結婚した夫婦が極端に子どもを産まなくなった」
だけでは説明できません。
では何が減ったのか。
結婚する年代の人口と、婚姻そのものです。
ここが今回の話の大事なところ。
赤ちゃんが生まれないから人口が減っている。
それは間違いではありません。
でも、その一歩前を見ると、
赤ちゃんを産み育てる世代そのものが減っている。
という問題があります。
レストランに例えるなら、
「最近、注文が少ないな。メニューを豪華にしよう」
と会議していたら、
そもそも客が店からいなくなっていた。
そんな状態です。
料理の改善も必要。
でも先に、
「客、どこ行った?」
と確認した方がよさそうです。
秋田県人口と女性・若者流出|若者流出の理由は進学・就職に集中する
そして「客、どこ行った?」を調べると、かなり分かりやすい答えが出てきます。
県外です。
秋田経済研究所が総務省「住民基本台帳人口移動報告」をもとに分析した2024年のデータでは、秋田県の県外転入者は1万83人、県外転出者は1万3,365人。
差し引き3,282人の社会減でした。
しかも、そのうち15~24歳だけで社会減は2,804人。
社会減の大部分が、高校卒業、大学進学、就職と重なる年代に集中していることになります。
非常に分かりやすい。
高校を卒業しました。
進学します。
就職します。
では秋田県外へ。
この流れです。
もちろん県外へ進学すること自体が悪いわけではありません。
東京でも仙台でも大阪でも、行きたい場所へ行けばいい。
問題は、
そのあと戻ってくる理由がどれだけあるのか。
という部分でしょう。
秋田県も2026年6月、人口減少の背景について、長期間にわたる若い世代の県外流出に加えて、大都市圏との賃金水準の差や、進学・就職時の選択肢の制約などを挙げています。
つまり県自身が、
「若者の地元愛が足りない」
とは言っていません。
仕事。
給料。
選択肢。
そこを問題として認識しています。
そりゃそうでしょう。
故郷への愛情だけで給料日は乗り切れません。
秋田県人口と女性・若者流出|女性の社会減が男性より大きい
さらに今回のテーマで見逃せないのが、女性の流出です。
2024年の秋田県の社会減3,282人を男女別に見ると、
男性:1,296人減
に対して、
女性:1,986人減。
女性の方が690人多くなっています。
年齢別でも、10~29歳や35歳以降の幅広い年代で女性の社会減が男性を上回り、秋田経済研究所は、女性について「転出後そのまま県外に定着し、県内に戻らない傾向が強い」と分析しています。
ここは結構重い。
単に、
「若者が出ていく」
ではありません。
女性の方が、より強く出ていっている。
そして最新の秋田県「人口移動理由実態調査」でも、県外転出者の理由を見ると、20~24歳では男女とも仕事関係が約7割。
女性でも、
- 転職・就職:31.7%
- 学生からの就職:31.9%
- 転勤:5.5%
となっており、20代前半の県外転出では仕事が非常に大きな要因になっています。
つまり、
「若い女性は都会が好きだから出ていく」
程度の話にしてしまうと、だいぶ雑です。
仕事を選ぶ。
給料を見る。
キャリアを見る。
暮らしを見る。
その結果として、
「秋田じゃない方がいい」
と判断されている可能性を考えなければなりません。
これは女性の問題ではなく、選ばれる側の問題です。
秋田県人口と女性・若者流出|「価値観が20年古い」はさすがに辛辣
ここで例の講演は、一段ギアを上げます。
秋田県では60代人口が厚い一方、東京都では40代人口が中心となっていることから、天野氏は秋田について、東京より人口構造が約20年高齢化していると説明。
そこから、
秋田の価値観も東京より20年古い、あるいは異なっている可能性がある
という問題提起をしています。
フォーラムのパネルディスカッションでも、登壇者から「秋田県の価値観が20年古いということが衝撃的だった」という発言が出ています。
秋田県民としては、
「おい、ちょっと待て」
です。
人口構成が20年高齢だから、価値観まで全員20年前。
これはさすがに一直線には結べません。
70歳でも新しい考え方をする人はいます。
25歳なのに、会話をすると昭和42年あたりから来たのかと思う人もいます。
年齢だけでは決まりません。
ただし。
「言い方が気に入らない」
だけで終わるのも違うでしょう。
人口の多数派が高齢層になれば、政治、会社、地域コミュニティなどで多数派の価値観が意思決定に反映されやすくなるのは自然な話です。
そこで若者が、
「こんな仕事がしたい」
「男女関係なくキャリアを築きたい」
「もっと柔軟に働きたい」
と言ったとき、
「昔はそんなこと言わなかった」
で返されたらどうなるか。
簡単です。
出ていきます。
今はスマートフォンを開けば、東京だけでなく全国の求人が見えます。
「うちは昔からこうだから」
という言葉に、人材を引き留める魔力はありません。
むしろ逆方向の魔法なら、かなり強そうです。
秋田県人口と女性・若者流出|女性が求める働き方も変わっている
もう一つ考えたいのが、女性の働き方です。
天野氏はフォーラムで、秋田県の女性管理職割合が低いことについて、
「女性が管理職になりたがらない」
と単純に考えるのではなく、
キャリア志向の女性ほど就職時点で県外へ流出している可能性を考える必要がある
という趣旨の問題提起をしています。
もちろん、これは因果関係が証明された話ではありません。
「管理職志向の女性が全員東京へ行きました」
などという単純な話ではない。
ただ、
「うちの女性社員に聞いたら、管理職になりたい人はいなかった」
だから、
「女性は出世を望んでいない」
と判断するのも危険です。
なぜなら、
出世したい人から先に会社を辞めていたら、そのアンケートには永遠に出てこないから。
これは企業採用でも同じです。
「優秀な若者が応募してこない」
ではなく、
優秀な若者の応募先候補に、そもそも入っていない。
似ていますが、まったく違う問題です。
秋田県人口と女性・若者流出|子育て支援だけでは人口減少を止められない?
ここまで読むと、
「じゃあ子育て支援なんて必要ないの?」
となりそうです。
そこは違います。
天野氏は講演で、地域に残った女性への子育て支援を最優先するだけでは、出生減は止まらないという非常に強い問題提起をしています。
これは、
「子育て支援が無意味」
と読むより、
「子育て支援だけで全部解決すると思うな」
と読む方が妥当でしょう。
なぜなら、
出産する世代を県外へ流出させながら、
「子育てしやすい秋田県にします」
と言っても、政策として順番がおかしくなるからです。
まず若者がいる。
仕事がある。
結婚や家族形成の選択肢がある。
そのうえで安心して子どもを育てられる。
この一連の環境が必要になります。
実際、秋田県の現在の総合計画も、婚姻・出産・子育て支援による自然減対策だけではなく、移住による転入増と県内就職による転出抑制を同時に進める必要があるとしています。
行政も、
「保育園だけ増やせば何とかなる」
とは考えていないわけです。
そこは安心しました。
さすがに話はそこまで単純ではありません。
秋田県人口と女性・若者流出|県も「社会減」を本気で減らそうとしている
では、秋田県は何もしていないのでしょうか。
そこも公平に見なければなりません。
秋田県が策定した「秋田県総合計画2026-2029」では、社会減3,408人という現状に対して、2028年に1,000人台、2029年には1,990人以下を目標としています。
さらに県は2026年6月、
- 大都市圏との賃金格差
- 進学・就職時の選択肢
- 地域に根付いたジェンダーギャップ
- 希望する仕事を選べる環境
- 柔軟な働き方
などにも踏み込んでいます。
ここは結構大きな変化ではないでしょうか。
昔ながらの、
「秋田はいいところです」
「自然が豊かです」
「ふるさとを大切にしましょう」
だけではなく、
「そもそも若者から選ばれていないのでは?」
というところまで行政側も踏み込んできています。
問題は、ここからです。
計画書を作れば若者が戻ってくるなら、県庁のプリンターを24時間フル稼働させれば人口問題は解決します。
残念ながら、人はPDFでは戻ってきません。
必要なのは、
「秋田で働きたい」
「秋田でもやりたい仕事を選べる」
「秋田でも自分らしい人生を作れる」
と思える現実でしょう。
秋田県人口と女性・若者流出|「秋田を愛して」より「秋田を選びたい」と思える県へ
ここまで散々厳しい話を書いてきましたが、
「結局、秋田には魅力がない」
という結論にもしたくありません。
食べ物はうまい。
酒もうまい。
温泉もある。
海も山もある。
大曲の花火は、本気を出すと何をどうしたらあんな規模になるのかよく分かりません。
秋田犬までいる。
観光地として手札を並べれば、結構強い県です。
でも、
「遊びに行きたい秋田」と「人生を預けたい秋田」は別物。
ここでしょう。
きりたんぽがおいしいから県内就職を決める人は、おそらく少数派です。
景色が美しいから、給料が低くてもキャリアの選択肢が少なくても構わない。
そこまで郷土愛へ要求するのも酷な話。
若い人が見ているのは、
「どんな仕事がある?」
「給料はいくら?」
「ちゃんと休める?」
「女性でもキャリアを築ける?」
「子どもを持っても働ける?」
「新しいことを始めたら応援してくれる?」
そんな現実ではないでしょうか。
だから、県外へ出る若者に、
「もっと秋田を好きになってほしい」
と言うだけでは足りません。
秋田が好きでも出ていく人はいるでしょう。
むしろ必要なのは、
「好きだから残れ」ではなく「残りたいと思える理由を増やすこと」。
企業も行政も地域も、
選ぶ側ではなく、
選ばれる側になった。
この認識が必要なのだと思います。
今回取り上げた講演は、かなり辛辣でした。
「秋田の価値観は20年古い」
「出生率だけ見ていてはいけない」
「若い女性の流出を止めなければ出生数は戻らない」
秋田県民からすれば、
もう少しオブラートに包んでくれませんか。
と言いたくなる部分もあります。
ただ。
数字までオブラートに包む必要はありません。
秋田県の人口は86万人台。
社会減はいまも続いている。
そして特に若者、さらに女性の流出が大きな課題となっています。
だったら、
「秋田だから仕方ない」
で終わらせるより、
「どうすれば選ばれる秋田になる?」
と考えた方がいい。
秋田を愛する気持ちは大切です。
でも、
愛だけで人は住み続けない。
たぶん、そこが今回の話で一番痛くて、一番大事なところです。
ちなみに、秋田県は移り住む人への支援も用意しています。秋田県移住支援金は単身60万円・2人以上世帯100万円に子ども加算が付く制度で、「戻る」「移る」を考えている人にとっては現実的な後押しになります。

参考資料
・Mirai View「人口の社会減と女性の定着に関する情報発信 秋田フォーラム」
・秋田県「令和7年人口動態統計(概数)に係る知事コメント」
・秋田経済研究所「あきた経済 2026年2月号 データでみる若年層の就業実態①」




